1. ABS樹脂とは？
光沢のあるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン（ABS）は、衝撃に耐える強さ、強靭さ、衝撃からの解放を兼ね備えた特定のタイプの熱可塑性ポリマーです。自動車から電子機器、玩具、家庭用品に至るまで、古くからある産業で幅広く使用されている。ABSは、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンが組み合わされた重合と呼ばれる工程を経て製造され、それぞれが材料に特定の特性を与えている：
- アクリロニトリルは耐薬品性と熱安定性に寄与する。
- ブタジエンは耐衝撃性と靭性を高める。
- スチレンは剛性と光沢のある仕上げを提供する。
ABSは射出成形という製造工程で広く使用されてきた。この工程では、高い耐衝撃性や強靭性など、ABSの優れた機械的特性が最大限に生かされる。ABS射出成形は、強度と耐久性を必要とするアイテムの製造に最適で、自動車のダッシュボード、電子機器ハウジング、家電部品などによく使用されています。
2. ABS樹脂の種類
ABS樹脂には、さまざまな用途に応じた多くの種類やグレードがある。主な種類は以下の通り：
- ABSスタンダード： 最もポピュラーなグレードで、強度、柔軟性、加工性のバランスがとれている。射出成形に有利な特性を持つ。
- ハイインパクトABS（HI-ABS）： このグレードは、靭性と耐衝撃性を向上させた設計で、自動車部品や保護ケースなどの用途に適しています。
- 難燃性ABS： このタイプのABSには添加剤が含まれており、プラスチックの燃焼性を低下させるため、難燃性を必要とする電気部品や家庭用品に最適です。
- ABS/ポリカーボネート（PC）ブレンド： ABSとポリカーボネートのハイブリッド。電子機器の筐体によく使われる。
- ABSプラス 優れた表面品質と理想的な加工特性を持ち、滑らかで高精度の最終製品を製造するためのABSの新しいバリエーション。
ABS樹脂には様々な利点があり、強度、耐久性、環境条件への耐性などを考慮した用途に適したグレードがあります。
6 ABS素材の特性
耐衝撃性： ABSは、その高い耐久性と耐衝撃性により、自動車部品や電子機器など物理的ストレスを受ける製品に使用されている。
剛性と靭性： 剛性と靭性のバランスが良く、要求の厳しい用途に使用される。
熱安定性： 衝撃をあまり受けずに熱を吸収するため（最高100℃/212°F）、自動車や電子機器の耐熱性に最適。
美的魅力： 滑らかで光沢のある表面は、塗装やテクスチャー加工が容易で、玩具や電子機器などの消費者向け製品に最適。
加工が容易： ABSは成形しやすい素材で、特に射出成形では複雑なデザインでも無駄が少ない。
耐薬品性： 多くの化学薬品は影響を受けませんが、アセトンなどの溶剤は影響を受けることがあります。
3. ABSの性能
ABSの性能
ABS樹脂は優れた機械的特性を持ち、多くの用途に適しています。主な性能は以下の通りです：
物理的性質
ABSは、その製造工程上、硬度、剛性、靭性といった機械的性質が非常に優れている。そのため、汎用エンジニアリング・プラスチックとして頻繁に利用されている。ABS樹脂は、白色または薄いクリーム色で不透明、無毒性であり、おおよその密度は1.05である。メルトフローレイトは0.2%から0.7%である。燃焼すると黄色い炎を発し、黒煙を出し、液垂れせず軟化しない。
耐熱性
ABSは耐熱性があるが中程度で、1.86MPaの熱変形温度は85℃前後である。10℃の熱処理でこの温度を上げることができ、ABSの使用範囲は40℃から85℃だが、100℃を超えることは推奨されない。ABSの熱伝導率は0.16～0.29W/(m・K)と広く、線膨張係数は(6.2～9.5)×10-⁵K-¹である。その結果、熱可塑性プラスチックの中でも膨張係数が低く、精密な寸法部品を作るのに適している。
機械的特性
高い衝撃強度を持つ強靭な熱可塑性プラスチックである。ゴム成分のエネルギー吸収特性のおかげで、シルバーラインの形成を防ぐことができる。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンは衝撃強度が高く、-40℃以下でも十分な低温靭性を持つ。また、耐クリープ性にも優れており、7.2MPaの荷重をかけた場合、対応するパイプは2年間そのサイズを保つ。
耐薬品性
ABSは水、無機塩、アルカリ、希酸に強い。しかし、農業用硫酸や硝酸などの酸化性酸には弱い。ストレスクラックは、脂肪族炭化水素、アルコール、鉱物油、植物油などに長時間さらされた場合に発生する。ABSは酢酸エチル、アセトン、塩化メチレンに溶解したり、エマルジョンを形成することがある。
耐候性
ABSの構造には二重結合があり、太陽光や熱、酸素に対してより弱い。最終的に、これは酸化と劣化につながる。例えば、ABSは6ヶ月間屋外にさらされると、衝撃強度が45％低下します。紫外線、熱、酸素がABSをもろくするのだ。耐候性を向上させるために、カーボンブラックやフェノール系酸化防止剤などの添加剤を配合するのが一般的です。
4. ABS射出成形ガイド
ABS射出成形は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンで構成された部品を製造するための最も一般的なプロセスの一つです。ここでは、ABS射出成形で使用される手順を説明します：
ステップ1 – 素材の準備
ABSペレットは射出成形機に装填される。溶融状態まで加熱され、金型に注入する準備が整う。
ステップ2 – 金型への注入
溶かしたABSを高圧で金型キャビティに注入する。射出工程は、材料が完全に均一に金型に浸透することを保証するため、慎重に調整されます。
ステップ3 – 冷却と固化
射出後、金型は冷却され、ABSは目的の形状に固化する。冷却時間は部品の厚みや金型設計によって異なる。
ステップ4 – 金型を開き、パーツを取り外す
部品が冷えて固まると、金型が開き、部品が排出される。その後、次の工程に進む前に、欠陥や品質が検査される。
ステップ5 – 後処理（必要な場合）
用途によっては、ABS成形品にトリミング、塗装、表面仕上げを施すこともある。
ABS射出成形を成功させる3つの秘訣：
- 温度管理： 反り、表面仕上げ不良などの欠陥を防ぐため、バレル、金型、材料の温度を制御する必要がある。
- 射出速度：ショートショットや不完全充填などの問題を避けるため、射出速度は慎重に調整する必要があります。
- 射出： 部品が金型から排出される際には、部品がその形状を維持できる程度に固化している必要があるため、排出時に変形しないように部品を摩耗させるには十分な冷却時間が必要である。
ABS射出成形金型温度ガイド
部品の収縮率が大きくなり、成形サイクルが長くなる。これに対処するために加熱金型法が用いられる。60～70℃の金型温度は、高い表面品質、複雑な形状、性能が要求される部品に最適です。
ABS射出成形圧力
射出圧力は、肉厚、装置の種類、樹脂グレードによって異なります。薄肉、長工程、スモールゲート、耐熱性、難燃性の製品では、圧力が高い方がよい。これはキャビティへの充填を助けますが、過剰な圧力は離型性の問題や破損の原因となります。内部応力を最小にするためには、保持圧力を60～70MPaにコントロールしてください。
ABS射出成形スピード
射出速度はABSの溶融流動性に影響する。射出速度が遅いと、コルゲーションや溶着不良のような表面欠陥の原因となります。射出速度が速いと、金型が適切に充填されるまでの時間が不十分となり、表面の仕上がりが悪くなります。通常の生産には、中速から低速を使用する。高速はトリッキーな金型充填にのみ必要です。
ABS樹脂成形後加工
ABS部品は内部応力がある場合がある。使用頻度の低い部品には熱処理が必要です。高性能部品は70～80℃で24時間加熱した後、室温まで冷却する。内部応力を調べるには、部品を氷酢酸に浸す。2分後に亀裂が生じなければ、応力は低い。5～15秒以内に亀裂が生じれば、内部応力が高いことを示す。
ABS射出成形の6つの主な利点
耐衝撃性と耐久性 – ABSは驚くほど強く、強靭であるため、磨耗や破損に耐える製品に最適です。自動車部品や電子筐体のような機械的ストレスのかかる部品に最適で、厳しい条件下でも無傷であることを保証します。
低材料費 – ABSを多用することで、部品コストを低く抑えることができ、ひいては全体的な生産コストを抑えることができます。射出成形による加工が容易なため、品質に妥協することなく大量生産が可能であり、大量生産におけるコスト効率は別次元です。
成形やデザインの柔軟性を促進 – ABSは流動性が良いため、歪みや不完全充填などの欠陥が発生しにくく、射出成形の加工が容易です。また、複雑な形状や複雑なデザインの製造が容易なため、製造業者は精巧で機能的な組成物を正確に作成することができます。
優れた美的仕上げ – ABS部品のガラス質トップは、多くの製品が求める、よりクリーンな外観を実現する仕上げです。塗装、テクスチャー加工、仕上げ加工が簡単で、追加工程が不要なため、消費者向け製品に最適です。
優れた耐熱性 – ABSは中温環境下でも優れた性能を発揮するため、部品が高温にさらされる可能性のある自動車や電気関連の用途で使用することができます。構造や性能を損なうことなく、熱に耐えることができます。
幅広い用途 – ABSは、自動車部品から家電製品、医療機器に至るまで、多くの産業で一般的に使用されている熱可塑性ポリマーです。ABSは添加剤（難燃剤など）で強化することが可能で、性能に関して柔軟性がある。サプライチェーンもより柔軟になる。
5. ABS樹脂射出成形の問題とその解決方法
ABSは広く使われている射出成形材料ですが、射出成形工程にはいくつかの課題があります。ここでは、よくある問題とその防止策をご紹介します：
| 問題 | 原因 | ソリューション |
| 反り | 不均一な冷却や金型設計の問題 | 冷却チャンネルと成形パラメーターの調整 |
| ショートショット | 不適切な射出圧力または不適切な金型温度 | 射出圧力を高め、金型温度を最適化する |
| フローマーク | 射出速度が速いか、金型温度が不適切 | 射出速度の低減と金型温度の微調整 |
| シンクマーク | 冷却が不適切な肉厚部品 | 肉厚と冷却時間の最適化 |
| エア・トラップ | 金型キャビティの通気不良 | カビ排気システムの改善 |
| 表面の欠陥 | 材料中の汚染または水分 | 材料の適切な乾燥と金型の清浄化 |
成形の初期段階でこれらの問題に対処することで、製品の品質を向上させ、スクラップ率を減らすことができる。
結論
丈夫で安価なABS樹脂は、何千もの用途で信頼されている素材です。ABSプラスチックの種類、性能、射出成形工程を知ることで、メーカーは生産を最適化し、製品の品質を向上させ、コストを削減することができます。さらに、ABS射出成形は、最適な金型設計、材料準備、加工パラメーターが行われれば、高い強度と耐衝撃性を必要とする部品に特に有益です。
BFY金型について
BFY Moldは射出成形と金型製造に焦点を当て、大量生産、オンデマンド生産、CNC加工、ミラースパーク仕上げサービスを提供しています。設備の整った自社工場と熟練した専属作業員により、お客様のプロジェクトに高品質で低コストのソリューションをお約束します。
新しいABS射出成形プロジェクトを開始するには、今すぐBFY金型にお問い合わせください！
ABS射出成形に関するFAQトップ10
1. ABSが射出成形に適した材料である理由は何ですか？
ABS（アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン）は、高い耐衝撃性、優れた加工性、そしてコストパフォーマンスを提供します。そのバランスの取れた特性（例えば、引張強度：40～50MPa、80℃までの耐熱性）は、自動車トリム、家電製品、工業用ハウジングに理想的です。
2. ABS射出成形のサプライヤーはどのような認証を持っている必要がありますか？
ISO9001（品質管理）、IATF16949（自動車）、難燃グレード（ABS+PCなど）のUL認証を確認する。医療用途の場合は、ISO 13485への準拠を確認する。
3. ABS部品の反りやヒケを防ぐには？
- 最適化された冷却： 金型温度を60～80℃に保つ。
- 均一な壁厚： 1.2～3.5mmの間で設計する。
- 材料の乾燥： ABSペレットを80～90℃で2～4時間予熱し、水分を減らす。
4. ABS射出成形ではどのような表面仕上げが可能ですか？
- SPI規格： 光沢（SPI-A1）、テクスチャー（SPI-C1）、マット（SPI-D3）。
- 後加工： ブランディングのための塗装、電気メッキ、レーザーエッチング。
5. ABS射出成形金型の一般的な金型製作コストは？
- アルミ金型： 3,000–3,000–15,000 (prototyping/low-volume).
- スチール金型： 15,000-15,000-80,000+（大量生産）。
コストは部品の複雑さ、キャビティ数、表面仕上げによって異なる。
6. リサイクルABSは射出成形に使用できますか？
はい、でも確実にしてください：
- ポストコンシューマーABSは、食品に接触する用途のFDA 21 CFRに適合しています。
- 機械的特性を維持するため、リサイクル率は30%以下。
- サプライヤーは材料のトレーサビリティと試験報告書を提供する。
7. ABSはPPやPCのような他のプラスチックと比べてどうですか？
| プロパティ | ABS | PP | PC |
| 衝撃強度 | 高い | 中程度 | 非常に高い |
| 耐熱性 | 80°C | 100°C | 130°C |
| コスト | $2–4/kg | $1–3/kg | $4–8/kg |
| ABSはコストと性能のバランスが取れており、PCは高熱用途に優れている。 |
8. ABS射出成形はどのような産業でよく使われていますか？
- 自動車 ダッシュボード部品、インテリアトリム
- 電子機器： キーボードキー、プリンターハウジング
- 家電製品： 掃除機の部品、冷蔵庫の内張り
9. サプライヤーは、ABS 部品の色の一貫性をどのように確保していますか？
- マスターバッチ混合： 均一な色のための正確な顔料投与。
- インライン分光光度計： リアルタイムカラーモニタリング
- バッチテスト： PantoneまたはRAL規格と比較する。
10. ABSのサプライヤーは、成形後にどのようなサポートを提供していますか？
- 組立サービス： 超音波溶接またはスナップフィットの統合。
- 品質保証： CMMレポート、落下試験、燃焼性チェック。
- 在庫管理： JIT（ジャスト・イン・タイム）配送で倉庫管理コストを削減。
